副業禁止の違法性と会社への対処法【行政書士監修】

国の方針転換を受けて副業解禁に踏み切る企業が増えている一方では、副業を禁止する会社が依然として多数を占めています。

副業には数々のメリットがあるはずなのに多くの企業が副業を禁止するのはなぜなのか、副業禁止には法律上の根拠があるのかどうかという点に疑問を抱いている人は少なくありません。

そうした疑問への答えとともに、副業がバレた場合の対処方法や会社にバレないように副業するコツについても解説します。

企業が副業を禁止する理由

副業が事実上解禁されたとは言っても、まだまだ8割ほどの企業が副業を禁止しているのが現状です。

1つの会社に縛られる働き方が得策でないと感じる社員にとってはメリットばかり目につく副業も、社員を雇用する企業にとっては以下のように副業を禁止したくなる理由があります。

従業員が副業することで企業が被るリスク

多くの企業が副業禁止の理由として挙げているのは、長時間労働によって本業の仕事に支障が及びかねないというリスクです。「労働時間の管理が難しくなる」という理由もこれに関連しており、従業員の健康管理に大きな責任を負う企業の大変さが窺えます。

他に副業がきっかけで顧客データなどの重要情報が流出するリスクや、本業のスキルを生かして副業を行った場合に会社と競合するリスクも副業を禁止する理由の1つです。

「本業に専念してほしい」が会社の本音

以上のようなリスクをすべて回避できるような副業を選んだとしても、たいていの会社では副業を決して歓迎はしないものです。

副業の中には本業で得られない新たなスキル獲得や人脈拡大につながるような仕事も少なくないだけに、副業をきっかけに転職や起業を決意するようなケースも考えられます。

会社側としては優秀な人材の流出につながりかねない副業は可能な限り禁止したいのが本音で、副業禁止は「本業に専念してほしい」「会社に忠誠を尽くしてほしい」という思いの表れとも言えます。

副業禁止は違法なのか

そんな会社の思いとは裏腹に、世の中は副業解禁へと大きく方向転換しつつあります。政府でさえ副業を積極的に推進させようとしている中で、あくまでも副業禁止を貫こうとするのは違法ではないかという声も少なくありません。

副業を禁止する法律は存在せず

企業が社員の副業を禁止する根拠は就業規則に限られ、副業を明確に禁止するような法律があるわけではありません。

企業ごとに決められている就業規則は厚生労働省が作成したモデル就業規則のガイドラインに準じており、従来はこのモデル就業規則にも副業が原則禁止と解釈される文言がありました。モデル就業規則が2018年に改正されて副業が解禁へと変更されたために、「副業元年」と言われるほど副業が大きくクローズアップされるようになったのです。

国が副業解禁へと方針転換した後も、多くの企業では前述のような理由から以前のモデル就業規則に準拠した就業規則のまま副業を禁止しているのが現状です。

裁判で副業禁止が認められた事例

労働基準法なども含めて副業を禁止する法律は存在しないとは言え、裁判で就業規則の有効性が認められた判例は存在します。

いずれも副業を理由とした懲戒解雇等の罰則を不服として起こされた訴訟に対する判決でした。罰則に正当な理由があると裁判で認められた事例に共通しているのは、会社の信頼や秩序を乱したり本業の職務に支障が出たりしたケースです。

副業禁止の場合で会社にバレたら

副業禁止の会社で副業をしていることがバレたからと言って必ず懲戒解雇されるとは限りませんが、何らかの罰則は避けられません。

そうした場合に対処を誤ると処分が重くなる可能性がありますので、予め対策を講じておく必要があります。

処分を軽くするための対処方法

副業禁止の会社で副業が発覚した場合に考えられる罰則では口頭での注意にとどまる訓戒や戒告が最も軽く、減給・出勤停止・降格・論旨退職・懲戒解雇の順で処分が重くなります。

処分をできるだけ軽くするには真摯な態度で謝罪するだけでなく、副業をしていた理由についても言い訳に工夫が必要です。住宅ローン返済に困っていたなどと生活が苦しいことを打ち明けるのはよくある言い訳のパターンで、子供の教育費や親族の医療費・介護費用が必要だったという言い訳も考えられます。

その上で副業に継続性がなく本業が最優先であることを強調し、今後は二度と副業をしないと誓えば処分を軽くしてもらえるものです。

副業を理由に不当解雇された場合の対処方法

就業規則に厳しい会社で副業が発覚した場合は問答無用で懲戒解雇される場合も考えられますが、この場合は不当解雇に当たらないかどうかの検証が欠かせません。

副業で会社に明確な不利益を与えたり、本業の仕事に支障が及んだりしたわけでもないのに解雇された場合は不当解雇に相当します。不当解雇で被った不利益は裁判で取り戻せる可能性がありますので、法的措置も視野に入れて弁護士に相談をしてみるといいでしょう。

副業禁止の場合で会社にバレないようにするために

副業禁止を理由に解雇されて法的措置に訴えるのはあくまでも最終手段に過ぎず、会社にバレないよう上手に副業を行うに越したことはありません。

本業の仕事で培ったスキルを副業にも生かすのが理想ですが、副業禁止の会社では可能な限り本業と競合しない範囲で副業を行うのが基本です。

住民税の申告には要注意

副業が会社にバレてしまうパターンで最も多いのは、住民税の申告で「特別徴収」を選んでしまうケースです。

副業所得が20万円以下で確定申告の必要がない場合でも住民税は必ず申告しなければならず、納税方法には本業の給料から天引される特別徴収と自分で納税する普通徴収から選べます。

住民税の申告書に納税方法を書く欄がありますので、副業禁止の会社でこっそり副業している人は普通徴収を選ぶのが鉄則です。

会社にバレない副業の選び方

副業の種類によっても会社にバレやすい副業とバレにくい副業がありますので、仕事の選び方が重要になってきます。

不特定多数の人が出入りする店でアルバイトをするのは会社関係者に見つかる可能性があるため、避けるのが無難です。アルバイト店員以外でも雇用契約を結ぶような仕事は給与所得に該当し、住民税の普通徴収が選べず本業の給与所得と合算されるために発覚しやすくなります。

副業禁止の会社でこっそり取り組むのに向いているのは、クラウドソーシングやスキルシェア、せどり、アフィリエイトなど雑所得に分類されるタイプの副業です。特に在宅で稼げる副業や投資は会社にバレにくいという点で安全性が高く、誰にも知られずに収入を増やしたいという人におすすめの方法です。

まとめ

副業を禁止している企業がおよそ8割にも達している一方では、副業経験のある会社員が3割以上存在するのも否定できない事実です。それだけ副業禁止の会社でこっそり副業している人が少なくないことを示す数字だと言えます。

副業禁止には法律的にグレーゾーンの面があるとは言え、就業規則が裁判で認められた判例があるという事実は重く受け止めなければなりません。将来的には副業解禁の動きが大きく拡大される可能性もありますが、現状では禁止の会社で副業を行う際には細心の注意を払う必要があるのです。

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副業スタディ

記事監修

監修:畑山 朋之(行政書士)

畑山朋之行政書士事務所代表。家系図作成の「家系図物語」代表行政書士。士業向けの副業コンサルタントとして弁護士、税理士、司法書士等へ副業のコンサルティングを行う。