副業の確定申告について最低限知っておきたいこと【行政書士監修】

本業以外に収入を得る手段が多様化する中で副業に取り組む人が増えていますが、サラリーマンが副業収入を得るようになると避けて通れないのが確定申告です。

普通は給料から税金が概算で天引きされる上に年末調整も会社が代行してくれるため、確定申告をしたことがないという人は少なくありません。

副業で収入を得るようになると自分で確定申告をしなければならないケースが出てきますので、申告のやり方や「20万円ルール」についても知っておく必要があります。

副業の確定申告のやり方とは

本業で得た給料と同様に、副業の場合も前年の1月1日から12月31日までの1年間に得た収入が確定申告の対象です。税務署に確定申告を行う際には申告書用紙の他に用意すべき書類があり、申告方法も3パターンが用意されています。

副業の確定申告を行う際に用意すべき書類

副業の確定申告を行う際には必要事項を記入した申告書用紙に加え、収入を証明する源泉徴収票や必要経費を証明する書類を揃えて提出することになります。

副業の種類に関わらずサラリーマンが自分で確定申告を行う際に必須となるのが、本業の会社から発行してもらう源泉徴収票です。副業で得た収入がアルバイトやパートなど給与所得に該当する場合は、こちらの源泉徴収票も用意する必要があります。

給与所得に該当しない副業の場合は所得を明らかにできる書類に加え、領収書など必要経費を証明する書類の提出も欠かせません。医療費や住宅ローン・寄付金などの控除を受ける場合は、納税額を減らすためにそれらの領収書も同時に提出する必要があります。

副業の確定申告を行う方法

1.持参or郵送

必要事項を記入した確定申告書と必要書類は税務署の窓口に直接提出することもできますが、申告書を郵送すれば税務署に足を運ぶ手間が省けます。申告書用紙も税務署まで取りに行く必要はなく、国税庁のホームページからPDFファイルをダウンロードして印刷することが可能です。

2.電子申告

ICカードリーダライタの取得・設定や開始届出書の提出など事前の準備は必要ですが、e-Taxと呼ばれる電子申告を利用すれば申告手続きがWeb上で完結できます。電子申告を行う手順は会計ソフトやe-Taxソフトで申告書データを作成し、同じソフトを使って送信するのが一般的です。

副業の確定申告の計算方法とは

確定申告の際には副業で得た収入を単純に記入すればいいというわけではなく、所得区分ごとに金額を記入して合算する必要があります。副業の種類によって所得区分が異なり、それぞれ計算方法が違ってくる点には注意が必要です。

副業の種類による所得区分の違い

数ある副業の中でもアルバイトやパートのように特定の企業や事業所と雇用契約を結んで給料を受け取った場合は、確定申告書の所得区分で給与所得に該当します。

アフィリエイトや転売・クラウドソーシングのような副業で得た収入は雑所得の対象ですが、継続的に安定した収入が得られると判断される場合は事業所得として申告が可能です。

この他にも不動産投資で得た収入は不動産所得に、株投資で得た収入は譲渡所得または配当所得にそれぞれ該当します。

所得区分ごとに異なる確定申告の計算方法

以上のように副業収入を所得区分に分けるのは、それぞれ控除額や計算式などが異なるという理由によります。給与所得の場合は1年間に得た給与収入から給与所得控除を引いた額が課税対象です。

これに対して雑所得の場合は、1年間で得た収入額から必要経費を引いた金額が課税対象となる点で給与所得と異なります。事業所得も雑所得と同じ計算式で算出されますが、税務署に開業届と青色申告承認申請書を提出すれば最大65万円の青色申告特別控除額が適用されます。

副業の収入が20万円以下だと確定申告は必要ない?

一般に確定申告が必要になる副業収入のボーダーラインは20万円と言われていますが、実際には20万円の収入で単純に線引きできない面もあります。

副業収入が同じ20万円でも給与所得と雑所得では計算式が異なるため、以下のようにさまざまなケースが想定されるのです。

副業の収入が20万円を上回っても確定申告が不要なケース

副業の種類がパートやアルバイトのような給与所得に該当する場合は、副業収入が20万円以下の人に限って確定申告が不要になります。副業で確定申告が必要になるボーダーラインが20万円と言われているのはそうした理由によりますが、アフィリエイトやクラウドソーシングなど雑所得に区分される副業収入はこの限りではありません。

この場合は副業収入が20万円を上回っても必要経費を引いた残りの所得が20万円以下に収まっていれば、確定申告が不要となるのです。

副業の収入が20万円以下でも確定申告が必要となるケース

医療費控除等による還付金を受けたいという場合は、副業収入が20万円以下であっても確定申告が必要になります。医療費控除を受ける際には本業の会社からもらっている給与所得と副業で得た所得を合算し、改めて確定申告を行う必要が出てくるのです。

同様に確定申告が必要になるケースとしては、住宅ローン控除を受ける場合や寄附金控除を受ける場合などが考えられます。

副業の確定申告をしないとどうなる?

手続きが面倒だったりうっかり忘れていたりして、必要な確定申告をしないまま申告期限を過ぎてしまったという例も珍しくありません。

ボーダーラインの20万円を少しぐらいオーバーしても気がつかれないだろうと思いがちですが、無申告が発覚すると以下のようなリスクを背負うことになるので注意が必要です。

副業の確定申告をしない場合に求められる罰則

決められた期限内に確定申告を行わなかった場合には、本来納めるべきだった税金に無申告加算税を加えた金額を支払わなければならなくなります。

無申告加算税は納税額50万円までの部分が15%、50万円を上回る部分が20%です。納付期限までに税金を納めないでいると無申告加算税だけでなく、申告が遅れるほど高額になる延滞税まで加算されてしまいます。悪質な不正と判断された場合はさらに重加算税が課せられ、最悪の場合は刑事罰を受けることにもなりかねません。

条件次第では無申告加算税を免れるケースも

副業の確定申告が必要だったのに、仕事が忙しかったりして申告をうっかり忘れていたというのはよくある話です。

そのようなケースでも法定申告期限から1ヶ月以内に期限後申告を自主的に行えば、無申告加算税が免除される可能性があります。無申告加算税を免除されるには納めるべき税金の全額を法定納期限までに納付し、なおかつ過去5年間に無申告加算税や重加算税を課されたことがないという条件も満たしている必要があります。

まとめ

副業が軌道に乗ってきて収入が増えると生活にも余裕が出てきますが、収入額に応じた税金を支払うのは国民の義務です。

その副業収入も前述のような条件次第では課税対象とならず、確定申告も不要になるケースがあります。雑所得に該当する副業収入では必要経費次第で確定申告が必要かどうかが変わってきますので、副業に取り組む際には経費のかかり具合を常に把握していることが大切です。

以上のような確定申告についての正しい知識を持っていれば、副業にも安心して取り組めるようになります。

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副業スタディ

記事監修

監修:畑山 朋之(行政書士)

畑山朋之行政書士事務所代表。家系図作成の「家系図物語」代表行政書士。士業向けの副業コンサルタントとして弁護士、税理士、司法書士等へ副業のコンサルティングを行う。