「ウーバー配達員労働組合準備」は副業をどう変えるのか?

特別なスキルがなくても空き時間を利用しながら手軽に稼げる副業として、ウーバーイーツの配達員が人気を集めています。

副業の選択肢を大きく広げたそんなウーバー配達員の間で、労働組合を結成する動きが見られるという報道がありました。労働組合をウーバー側が容認するようになれば副業のあり方が大きく変わる可能性があるだけに、副業の普及に向けて注目されるニュースです。

ウーバー配達員とは?

巷で話題を集めているウーバーイーツとは、アメリカに本社を置くウーバー・テクノロジーズの食事宅配サービスです。ウーバーイーツのスマホアプリを通じて飲食店に食事を注文すると、配達員が自宅まで注文の品を届けてくれるという仕組みです。

ウーバーイーツは日本でも古くから行われていた出前に似ていますが、配達員は飲食店の店員ではなくウーバー社と業務委託契約を結ぶ個人事業主だという点で異なります。

食事の配達には主にバイクや自転車が利用され、近場であれば徒歩で配達することも可能です。日本では東京など大都市から順にウーバーイーツのサービスが開始され、人口の多い地域ほど注文が多く寄せられているため、効率よく稼ぎやすい副業として人気が高まっています。

ウーバー配達員が人気の副業となっている理由

ウーバー配達員は特定の店舗に縛られることもなく、都合のいい空き時間だけ働くことで手軽に報酬が得られます。ウーバー配達員の報酬は商品の受け取りと配達に伴う固定報酬に加え、移動した距離に応じた金額が加算される仕組みです。1時間に複数件の配達をこなしたり、忙しい時間帯を選んで特別手当を加算してもらったりすることで、時給換算1,500円以上の収入を稼ぐことも可能になってきます。

ウーバーイーツ配達員は自転車やバイクを持っている人であればすぐに始められる上に、仕事量も自分で自由に選択できるという点が人気の一因です。基本的に1人で取り組む副業で面倒な人間関係もない上に、自転車で配達すれば健康増進に役立つというメリットも見逃せません。

交通事故に遭うウーバー配達員が続出

どの副業にもメリットがある一方でデメリットも存在するものですが、その点ではウーバー配達員も例外ではありません。ウーバー配達員の仕事で特に問題となっているのが、配達中に交通事故に遭うケースが増えている点です。

現状だとウーバーイーツのサービスが展開されている地域は大都市中心で、道路状況が過密な中を自転車やバイクで配達しなければなりません。どうしても交通事故に巻き込まれるリスクが高くなり、配達中の事故で怪我をしたという人が続出しています。

普通なら仕事中の事故は労災扱いとなって保険が適用され、雇用する企業なり店舗なりが治療費を負担してくれるものです。しかしながらウーバー配達員には労災が適用されず、配達中の事故で怪我をしても治療費は全額自己負担となってしまいます。

ウーバー配達員が労災保険の対象外となる理由

このようにウーバー配達員に労災保険が適用されないのは、ウーバーとの間で雇用契約を結んでいない個人事業主の扱いとなっているのが主な理由です。業務委託契約を結んで仕事を請け負う個人事業主は労働者でないと見なされ、労災保険の対象外とされてしまうのです。

ウーバーイーツはクラウドソーシングやスキルシェアサービスなどと同様に、需要と供給を仲介することで一定の手数料収入を得ています。運営会社は食事を注文する利用客と店舗、配達員という3者を仲介するためのプラットフォームを提供する存在に過ぎません。運営会社と雇用関係にないウーバー配達員は仕事を受けるのも断るのも自由に選べるだけでなく、配達を依頼される飲食店とも基本的に1回限りの仕事を請け負うだけの気楽な立場にあります。

その代わりウーバー配達員は配達中の安全に関して自己責任ということになり、事故に遭ったところで労災保険に加入していないのでは補償も受けられません。特定の店に縛られず自由に働けるというウーバー配達員最大のメリットが、配達中の事故で怪我を負った瞬間に大きなデメリットへと転じてしまうのです。

労働組合が結成されれば状況改善の可能性

ウーバー配達員が交通事故に巻き込まれるケースは日本に限らず頻発しており、アメリカなど海外でも運営会社との間でトラブルに発展している事例が少なくありません。そういうケースに対してウーバー側はこれまで一貫して交渉を拒否してきました。ウーバーイーツのサービスが日本でも急速に普及して利用者が増えるとともに配達員の数も急増し、交通事故の問題が大きくクローズアップされるようになっているのです。

ウーバー配達員は個人事業主の立場とは言え、実際にはウーバー側が報酬額や注文差配の決定権を持っているだけに、限りなく雇用関係に近いという指摘もあります。現時点ではウーバー配達員が団結して労働組合を結成したところで、ウーバー側で協議に応じる可能性は低いと見られます。そうなると労働委員会に持ち込まれる公算が大きくなり、最終的にはウーバー側が労働組合を容認せざるを得なくなるのではないかという見方も可能です。

ウーバー配達員による労働組合結成の動きがきっかけとなって、同様のリスクを抱える他の副業関連サービスにも影響が及ぶことは十分に考えられます。現状だと副業に取り組む個人は仕事獲得に欠かせないサービス運営会社に対して弱い立場にあありますが、互いに団結することで自身を取り巻く不利な環境を変えられる可能性が出てくるのです。

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副業スタディ

記事監修

監修:畑山 朋之(行政書士)

畑山朋之行政書士事務所代表。家系図作成の「家系図物語」代表行政書士。士業向けの副業コンサルタントとして弁護士、税理士、司法書士等へ副業のコンサルティングを行う。